本学では生活文化科に三つの専攻と一つの専攻科を設け、女性リーダーの育成に取り組んでいます。言語、ビジネス、ICTデザインなどを学ぶ「生活文化専攻」保育を学ぶ「生活こども専攻」食について学ぶ「健康栄養専攻」管理栄養士と栄養教員の資格の修得が出来る専攻科です。聖霊短大では各専攻を横断する独自の教育理念「BILTH」(ビルス)を提唱し、学生・教員・地域が共に学び合う場として、研究所の設置と拡充を進めています。
BILTHは「ビジネス」「イノベーション」「リーダーシップ」「テクノロジー」「ヒューマン・デベロップメント・サイエンス」(人間発達科学)五つの英単語の頭文字を組み合わせた言葉です。これらをキーワードにして短大としての研究を深めることで、地域社会や国際社会、デジタル社会で活躍出来る人材育成を実現できます。
人類を取り巻く世界は現在、四つの社会から成っています。それはデジタル社会、グローバル社会、地域社会、スペースステーション開発により誕生した宇宙社会です。ICT技術の進歩やAIの導入により、この4つの社会の急速な融合が世界のフラット化をもたらしました。世界のフラット化いう概念はトーマス・フリードマンが提唱したものです。国や個人の間に上下関係のない、対等な関係のフラット化した世界は計り知れない可能性に満ち溢れています。①インクルーシブマインド(すべての文化や人を受け入れられるマインド)②マインドフルネス(何かに集中し成し遂げる力) ③グローバルビジネス創造力 ④DXデザイン力 ⑤リーダーシップ⑥イノベーション力⓻技術創造力が必要です。聖霊短大は、これから人類が必要とするこれらの領域で研究を深め、様々な学間分野を確立し、学生を始め、秋田県や世界に貢献したいという思いは未来研究の背景です。
本学で行っている未来研究には6つの目的があります。
1番目の目的は人類の幸福に必要な様々な領域で行っている研究を深めることです。
2番目の目的は人間の発達が必要とする様々な学問分野を確立することです。
3番目の目的は社会、環境、健康の課題の解決に貢献することなどです。
4番目の目的は研究結果が人類の発展や未知への追求、技術・イノベーション、ビジネス創造の科学的根拠の下地となるように研究を行うことです。
5番目の目的学生の研究力と問題解決力の向上です。
6番目の目的は学生、地域、教員共に学ぶ場を創造することです。
地域のビジネスを世界のビジネスに、世界のビジネスを地域のビジネスに
グローバルビジネス創造研究所の研究の様子(学生がゼロ資本金でビジネス創造を学内で体験する様子)
本研究所の設立の背景に六つのことがあります。
一番目の背景は個人や地域ビジネスが国や地域を超えて事業を展開する際に現地の組織や住民との関係構築に苦戦していることです。グローバル化やデジタル化が人類に計り知れないビジネスの可能性をもたらしました。しかし、秋田を始め、世界中の地方都市がビジネスをグローバルに展開する際は展開先で苦戦を強いられています。
二番目の背景はグローバル戦略の欠如と情報が不足していることです。その結果、多くの地方はビジネス機会が訪れても、それを活かす準備ができていないから逃してしまいます。
三番目の背景は地域の個人や企業が自らグローバルビジネス機会を積極的に探求することが不足していることです。それには二つの理由があります。一つ目の理由は地方都市では関心をもつに至る情報やきっかけがないことです。二つ目の理由は地方都市の多くでは、DXデザイン力、ビジネス創造力、リーダーシップ、イノベーション力を持ったグローバルに活躍出来る人材が少ないことです。
四番目の背景はグローバル草の根ビジネスやサプライチェーンのネットワーク不足です。草の根ビジネスネットワークは企業、自治体、教育機関、市民が主体のビジネスプラットフォームです。しかし、世界の多くのビジネスネットワークとサプライチェーンは大企業や国家主導のものです。地方の多くの企業や個人はグローバルビジネネットワークと世界のサプライチェーンと効率的に統合が出来ずビジネスチャンスを逃しています。
五番目の背景は、本学の社会的責任です。本学の「調査研究の企画・実施」、「企業・地域・外部機関との研究プロジェクトの推進」、「国内外の自治体・大学・研究機関・企業・市民との協力・提携・交流」を通じて草の根ビジネスとサプライチェーンのネットワーク構築、や「人材育成」などをとして秋田県のビジネスの活性化と地域経済のグローバル化に貢献したいという思いです。
六番目の背景は世界のビジネスと交渉の分類や新しいグローバルビジネス創造の必要性です。文明の始めからビジネスが富と雇用の創出だけではなく経済成長とイノベーションを推進し、人類の生活水準を向上させてきました。現在世界にグローバルビジネス方法以外に昔からの数え切れないほどの伝統的なビジネス方法が存在します。本研究所は世界の様々のビジネス文化を大きく4モデルに分類し研究します。それは氏族型ビジネス文化、アドホクラシー型ビジネス文化、市場型ビジネス文化、階層型ビジネス文化です。そして本研究所ではこの4つビジネスモデルをビジネスの交渉、習慣や文化などの違いでさらに細かく35種類に分類し、詳細なビジネス文化研究を目指しています。その中で現在、よく知られているのはイスラム法に基づくイスラムビジネス、ユダヤ人のビジネス伝統、華僑のビジネス伝統、印僑のビジネス伝統などです。さらに、本研究所が35種類に分類したビジネス方法を下地にして新しいグローバルビジネスの創造と交渉の方法を研究します。
所長:大曽基宣 博士
マインドフルネスASOBI研究所の設立目的は、子どもにおけるマインドフルネス傾向と活動・生活習慣などの関係を明らかにし、子どもの自己発揮や健康につながる保育・教育プログラムを開発することです。ASOBIの頭文字は、A:Attention(注意)、S:生活習慣、O:親子、B:Behavior(行動)、I:Interaction(相互作用)を表します。これらは本研究所の研究キーワードです。
マインドフルネスとは、「今この瞬間に意識を集中させ、過去や未来にとらわれることなく、現在の出来事に注意を向けること」です。マインドフルな状態は、ストレスの軽減、注意力・集中力の向上、感情をコントロールする力・共感力の向上、自己理解の促進、創造力の育成などにつながります。
私たちの研究グループ(インクルーシブマインド研究所所長の野内教授と連携)は、マインドフルネス傾向が直接的に、あるいは自己効力感・スクリーンタイム・睡眠習慣などを介して間接的に、中学生の日中の眠気に影響することを示した学会発表(第31回日本行動医学会学術大会 第26回日本子ども健康科学学術大会合同大会2025年2月.東京)で、優秀発表賞をいただきました。この様に、いま子どもの健康や教育の領域においてマインドフルネスが注目されつつあります。
本研究所は、本学が地域の親子に向けて開催している親子のあそび場「あそび場創造プロジェクト」を通じて地域とつながります。ここでは、遊びを通してマインドフルネスを育む活動を取り入れます。例えば、自分の感情への気づき・感情コントロールにつながる遊びなどです。嬉しい気持ちをシャボン玉に乗せてじっくり眺める遊び、気持ちを落ち着かせるダンス等々、様々な遊びを用意しています。本研究所の取り組みが、地域の親子の幸せにつながるよう尽力します。
所長:野内友規 博士
本研究所は、インクルーシブマインドの獲得プロセスを明らかにし、教育・保育・生活プログラムを開発することを目的に設立します。インクルーシブマインドとは、多様性を尊重し、誰もが安心して活躍できる社会を実現するための感じ方や考え方のことです。特に、人口減少と高齢化が進む秋田県では、今後ますます多様な人々が支え合う社会の実現が求められていきます。外国人の積極的な雇用、高齢者や障がいのある方の活躍を地域の活性化につなげることが望まれます。このような社会変革を実現するために、それを支える相互理解と共生の精神の基盤を私たちの心の中でより強固なものにしていくことは喫緊の課題です。
近年、多様性の受容が、組織の成長や持続可能な社会の実現に不可欠と認識されはじめています。例えば、世界的大企業では、従業員のエンゲージメント向上やグローバルなネットワークづくりの観点から、多様性を尊重する研修が実施されています。秋田県においても、労働力不足を補うため外国人労働者の増加が今後見込まれ、さらに高齢化の進展に伴い、障壁を超えた社会システムがより重要になってくることが予想されます。そのためには、単に他者を受け入れるだけでなく、一人ひとりが自己理解を深め、柔軟な思考を持ち、多様な価値観を尊重する姿勢が求められます。しかし、このようなマインドは、無意識下の思考や感情が司るため、知識を学ぶだけでは獲得が難しく、より専門的体験的アプローチが必要になります。
本研究所では、講座やワークショップに加え、音楽や運動など多方面からマインドにアプローチするプログラムを開発展開します。体験型の学びを通じ、感情のバランスや思考のコントロールを養いながら、インクルーシブな考え方を深めていきます。自己理解を促し、他者と協力しながら成長する力を身につけることで、多様な人々が共に支え合い、誰もが安心して暮らせる温かい地域社会を築いていきます。企業や教育機関、地域住民とも連携し、秋田県における持続可能な未来を目指します。