2025年6月29日 共生の街・神戸で感じた人間の尊厳と平和
先週、全国カトリック学校の研修会に参加するため神戸に出かけました。研修会終了後、特別企画として「多文化・多宗教共生のまち 神戸」を巡る貴重なフィールドワークに参加する機会を頂きました。見学した場所をご紹介します。
1.カトリック神戸中央教会
フィールドワークのスタートはここ、神戸における最初のカトリック教会です。1995年の阪神・淡路大震災で建物が半壊し、その後、近隣の教会と統合して再建されました。震災当時は復興支援の拠点にもなり、今も多くの人々に希望と助けを届け続けている教会です。

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2.一宮神社
神戸には一宮から八宮まで、すべての神社が現存しています。神戸港の開港を契機に、多様な民族・宗教の人々が集い、従来の住民と共に共生しながら町が発展してきました。その歴史の重層性を感じさせられる場所でした。

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3.神戸ハリストス教会
「ハリストス」はロシア語で「キリスト」を意味します。1917年のロシア革命後、日本に亡命したロシア人たちが築いた日本正教会の聖堂です。民家の間に佇む小さな青い屋根の教会は、東方教会の祈りの伝統を今も静かに伝えているように感じました。

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4.旧神戸ユダヤ共同体跡地
貿易港として発展した神戸には、多くのユダヤ人商人が移り住みました。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによる迫害から逃れたユダヤ人たちは、杉原千畝氏が発給した「命のビザ」を携え、この地にたどり着きました。ここから約5,000人の人々が新たな土地へと旅立った歴史が刻まれています。

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5.神戸バプテスト教会
バプテスト派は17世紀のイギリスで誕生したプロテスタントの一派で、日本では1889年、米国南部バプテストによって宣教が始まりました。全国に約330の教会があり、この教会も地域の信仰の拠点として歩んできました。


特に印象的だったのは、祭壇奥の大きな扉の中を見せていただいたことです。カトリック教会で言えばご聖櫃にあたるような神聖な空間ですが、バプテスト教会ではこの場所が「バプテストリー(浸礼槽)」になっており、信仰を告白した人に水の中に沈む形で「浸礼(バプテスマ)」(カトリックでは洗礼)を授けます。この浸礼は、信仰者の新しい人生の始まりを示す大切な儀式です。
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6.ジャイナ教寺院(バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院)
ジャイナ教は、紀元前6世紀頃にインドで生まれた古い宗教で、「不殺生」を徹底する教えで知られています。この世の中に生きているすべての命を傷つけないことを最も大切な戒めとし、厳格な菜食主義を実践します。日本に寺院があるのは珍しく、この寺院は在日インド人コミュニティの精神的中心として建てられました。


密集した住宅地の中で、隣家とほとんど接するように佇むその建物は、きらびやかな金属の扉や手の込んだ装飾が異国の雰囲気を放ち、ジャイナ教独特の世界観を感じました。
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7.関西ユダヤ教団シナゴーグ(会堂)
1912年に設立された日本最古のシナゴーグで、祈りの場であると同時に、教育や行事、会食などを通じてユダヤ人コミュニティーの絆を育む中心的な場所です。移り住んだ人々が、見知らぬ土地でも互いに助け合い、伝統や文化を次の世代へ伝える拠点となってきました。安息日や祝祭日を共に祝う温かい空気が息づいており、信仰と生活が一体となった共同体の大切さを感じさせられました。

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8.神戸ムスリムモスク
1935年、神戸に在住していたトルコ人、タタール人、インド人の貿易商たちの寄付によって建てられた、日本で最初のモスクです。白いミナレット(高い塔)が空に映え、祈りの場としてだけでなく、イスラム教徒の心のよりどころとなってきました。現在も多くの外交官や実業家が礼拝に訪れ、神戸がいかに多様な文化を受け入れてきたかを象徴する場所となっています。



内部はふわふわの絨毯が一面に敷かれ、礼拝のときは全員がメッカの方向(キブラ)を向いて祈ります。祈りの方向をそろえることが、イスラム教徒にとってとても大切な信仰のしるしです。静かで厳かな空気が印象的でした。
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(番外)生田神社
プログラムには含まれていませんでしたが、駅に向かう途中に立ち寄りました。街の中心に鎮座する由緒ある神社で、全国的にもその名を知られています。たまたま通りかかって撮影した一枚ですが、平日とは言え、大勢の人々が訪れている様子から、神戸という町に根付く伝統と祈りを感じさせられました。

今回訪れた神戸の多様な祈りの場は、それぞれの人々が大切に守り継いできた信仰と文化の証であると感じます。宗教や民族の違いを越えて、互いを尊重し、共に生きる姿に触れることは、私たちが「人間の尊厳と平和を礎とし、未来に希望を見出す教育」(研修会のテーマ)を目指す上で、何よりの学びとなりました。
多文化・多宗教の共生は、決して遠い理想ではありません。こうして身近な現実としてここに息づいています。この体験を心に刻み、本校の生徒たちにも多様な価値観を尊び、共に希望を築いていける視野を育んでいきたいと思います。